鏡を見たときに歯茎の色や腫れが気になっても、痛みがないからと様子を見ている方は少なくありません。「腫れているけれど痛みがないなら、そのうち治まるはず」と考えてしまう気持ちはよく分かります。しかし、痛みのない歯茎の腫れこそ、歯周病がひそかに進行しているサインであることが少なくないのです。
歯茎の腫れに痛みがないのは歯肉炎のサインであることが多いです

痛みを伴わない歯茎の腫れは、歯周病の初期段階である「歯肉炎」であるケースが多く見られます。歯肉炎は歯を支える骨にはまだ影響が及んでおらず、歯茎の表面だけに炎症が起きている状態です。この段階では出血や腫れはあっても、強い痛みを感じにくいのが特徴です。
歯肉炎は歯を支える骨が溶ける前の初期段階です
歯と歯茎の境目にプラーク(歯垢)が溜まると、細菌によって歯茎の炎症が起こります。この時点ではまだ歯槽骨(歯を支える骨)にダメージが及んでいないため、適切なブラッシングと歯科でのクリーニングによって改善が見込める段階とされています。
歯茎の色や腫れ方でセルフチェックできるポイントがあります
健康な歯茎は薄いピンク色で引き締まっていますが、炎症が起きると赤みを帯び、丸みを帯びて腫れぼったく見えることがあります。歯磨きのときに出血する、歯と歯茎の境目がぷっくりしているといった変化は、歯肉炎のサインとして見逃さないようにしたいポイントです。
一部だけ腫れる場合は別の原因が隠れていることがあります
歯茎の腫れが特定の一本だけ、あるいは一部分だけに見られる場合は、歯肉炎とは異なる原因も考えられます。むし歯の進行による根の先の炎症や、親知らず周辺の智歯周囲炎などが代表的です。全体的な腫れと局所的な腫れでは対応が異なるため、当院ではまず歯科用CT(モリタ ベラビュー800プラス)や口腔内スキャナーで撮影した画像をお見せしながら、腫れの範囲と原因を一緒に確認するようにしています。
痛みがないことは歯周病が軽いという意味ではありません
歯茎の腫れに痛みがないからといって、歯周病の進行度が軽いとは限りません。歯周病は歯を支える組織を少しずつ壊していく病気ですが、その過程で強い痛みが出にくいという性質があるためです。自覚症状が乏しいまま進行してしまう点こそ、歯周病への注意が必要な理由といえます。
歯周組織は痛みを感じにくい構造をしています
歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)の奥深くで進む炎症は、知覚神経が敏感な部分から離れているため気づきにくいとされています。骨が溶けて歯がぐらつく、膿が出るといった目に見える変化が出るころには、すでに中等度以上まで進行しているケースも珍しくありません。
実際に自覚症状がある人の割合をデータで見てみます
歯科疾患実態調査では歯周関連の自覚症状として「歯ぐきが痛い、はれている、出血がある」を有する人の割合が調査されており、65歳未満の成人では概ね15%前後、65歳以上の高齢者では10%強の人が歯周関連の自覚症状を有しています[1]。また歯科疾患は自覚症状を伴わずに発生することが多く、疾患がある程度進行した時点で症状が生じるとされており[2]、痛みの有無だけで自己判断することの難しさが分かります。
放置すると歯を支える骨が徐々に失われていきます
腫れを放置していると、歯肉炎から歯周炎へと移行し、歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ吸収されていきます。院長は「虫歯は削って終わりの病気ではない」という考えのもと、歯茎の腫れについても表面的な症状だけでなく、その奥で何が起きているかを精密な診査・診断から見極めることを大切にしています。
歯周病は軽度・中等度・重度と静かに進行していきます

歯周病は一気に悪化するのではなく、軽度・中等度・重度という段階を経て進行していきます。それぞれの段階で歯周ポケットの深さや骨の吸収の程度が異なり、治療の内容も変わってきます。ご自身の状態がどの段階にあるかを知ることは、受診のタイミングを判断するうえで役立ちます。
| 進行段階 | 主な状態 | 自覚しやすい症状 |
|---|---|---|
| 軽度(歯肉炎) | 歯茎の炎症のみ、骨はほぼ健康 | 歯茎の赤み・腫れ、歯磨き時の出血 |
| 中等度(歯周炎) | 歯周ポケットが深くなり骨が一部溶ける | 口臭、歯茎の後退、たまに痛み |
| 重度(歯周炎) | 骨の吸収が進み歯を支えきれなくなる | 歯の動揺、膿、噛むと痛む |
軽度の段階ではセルフケアと歯石除去で改善を目指せます
歯肉炎の段階であれば、丁寧なブラッシングと歯科でのスケーリング(歯石除去)によって、歯茎の健康な状態への回復を目指すことができるとされています。
中等度以降は歯周ポケットの奥へのアプローチが必要になります
歯周ポケットが深くなると、通常のブラッシングだけでは奥のプラークや歯石を取り除くことが難しくなります。当院ではSRP(歯根面の汚れを取り除く処置)で改善が見られない場合、フラップ手術などの外科的な処置まで、進行度に応じた選択肢をご用意しています。
定期的な受診が進行を防ぐうえで重要とされています
30歳代は歯周炎が発症しやすい年齢であり、それ以前の若年期からの予防的メインテナンスが重要であると学会の報告でも指摘されています[4]。また歯周病は全身の健康とも関わりがあり、歯周病は糖尿病などの全身疾患とも関連があることが調査から分かっており[3]、お口だけの問題として軽視できない側面もあります。
気になる腫れは早めの受診とセルフケアの見直しが有効です
歯茎の腫れに気づいたら、痛みの有無にかかわらず一度歯科で状態を確認することをおすすめします。進行段階によって必要なケアが異なるため、まずは検査によって現在地を把握することが、その後の対応を考えるうえで役立ちます。
検査では歯周ポケットの深さと骨の状態を確認します
歯周病の診断では、専用の器具で歯周ポケットの深さを測るプロービング検査や、レントゲン・CTによる骨の状態の確認を行います。当院では歯科用CTとセファログラム(頭部X線規格写真)を用いて、歯茎の下で起きている変化を画像で確認しながらご説明するようにしています。
メンテナンスの通院間隔は状態に応じて個別に設定します
歯周病は治療が終わった後も再発しやすい病気とされているため、継続的なメンテナンスが欠かせません。当院では1回あたり約45分のメンテナンス時間を確保し、リスクの状態に応じて3〜4ヶ月を基本としながら、1〜2ヶ月や6ヶ月ごとなど通院間隔を個別に調整しています。
通いやすさも継続したケアを支える要素になります
歯周病のケアは一度で終わるものではなく、長く付き合っていくものです。当院は湘南モノレール湘南深沢駅から徒歩7分、駐車場は約400台をご用意しており、土曜・日曜も診療しておりますので、お仕事や子育てで平日の通院が難しい方にもご利用いただきやすい環境を整えています。
まとめ
- 痛みのない歯茎の腫れは、歯を支える骨にまだ影響が及んでいない「歯肉炎」のサインであることが多いです
- 歯周組織は炎症に気づきにくい性質があり、歯周関連の自覚症状を有する人は成人で概ね15%前後にとどまるというデータもあります[1]
- 歯茎の腫れが一部分だけの場合は、むし歯や智歯周囲炎など歯肉炎とは異なる原因が隠れていることもあります
- 歯周病は軽度・中等度・重度と段階的に進行するため、当院ではCT画像などを用いて現在の状態を確認しながら治療方針をご説明しています
- 治療後の再発を防ぐため、当院では45分程度のメンテナンス時間を確保し、通院間隔を個別に調整しています
鎌倉で歯茎の腫れが気になる方は、痛みがなくても一度検査を受けてみませんか。鎌倉ルクス歯科・矯正歯科では、歯科用CTや口腔内スキャナーによる精密な診査・診断をもとに、歯茎の状態を画像で確認しながらご説明しています。土曜・日曜も診療しておりますので、平日のお時間が取りにくい方もご相談ください。ご来院前の流れは初めての方へ(初診の流れ)のページをご確認いただけます。
関連する診療ページ:歯周病治療
参考文献
[1] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム(旧e-ヘルスネット)「歯周疾患の有病状況」kennet.mhlw.go.jp
[2] 厚生労働省「歯の健康」mhlw.go.jp
[3] 日本歯科医師会 テーマパーク8020「歯周病と糖尿病の関係」jda.or.jp
[4] J-STAGE「歯周疾患検診の変遷と現状ならびに国民皆歯科健診の具体的検討」jstage.jst.go.jp